かつて、小学校の先生だった哲代さんは、いまでも、姪の弥生さんが買ってきた子供用の算数のドリルを解く。また、新聞の折り込みに入っている脳トレにも積極的に挑戦する。答えは必ずノートに手書きすることにしている。
日記を書くことも、大切な日課だ。文字の読み書きは脳の活性化にもつながるとされる。
近頃は散歩や畑仕事が以前のようにできなくなった。
それでも「自分を労ってやりたいです」と、本人は素直な心境を綴る。
〈できん、できんと嘆くんじゃのうて、ああ、これができた、あれもできたって、1つ1つに大喜びしながら自分を盛り上げるっていうんかな。〉
3 よく食べ、よく寝る
哲代さんの楽しみの1つは食事だ。
〈少々しんどうても、好きな物、食べたいと思うもんをしっかりいただく。食べんことには元気が補充できませんから。〉
最近の食欲について、弥生さんも感心している。
「お米なんて1升食べるんじゃないかというくらいよく食べるんですよ(笑)。いりこ(煮干し)の味噌汁も自分で作って飲みます。昨日も薄く切った牛肉を『美味しい、美味しい』と言って食べていました」
施設から帰った日も、すぐに、自分で味噌汁を作ろうとした。
「病院も悪うないけど、やはり家のご飯がええと思います。今朝もいりこの味噌汁を作ろう思いよったけど、近所の方が挨拶に来てくれて。話しとったらバタバタしてしもうて」(哲代さん)
そして、甘いものをよく食べる。シュークリーム、プリンなど好物は多いが、オロナミンCが大好きだという。
「入院中は飲めんかったけど、それでも元気ハツラツでした(笑)。また、飲みたいね。お菓子で言えば、お饅頭も食べたい。あんこは美味しいからね」(同前)
あんこは、貧血に効果が見られる鉄や、骨や歯を作るカルシウムなどが豊富で、高齢者にはピッタリのおやつだ。哲代さんは、どらやきやおはぎなどをよく食べるそうだ。
そして食事と同じく大事にしているのが睡眠だ。
「寝つきがすごく良いので驚きます。朝も7時。よく食べてよく寝るので、すごく元気です」(弥生さん)
高齢者の中には睡眠時間が減り、寝付けないという人も多い。出来る限り自分のことを自分でやるので、体に適切な負荷がかかり睡眠の質がよくなるのだ。
4 悲しみやつらさを分かち合う
いつも元気な哲代さんも、気落ちすることがある。地域のおばあさんたちが週に一度集まる「仲よしクラブ」の仲間が、先日、亡くなったのだ。