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「会社員に専業主婦、健康な子ども2人」霞ヶ関エリートが考える“標準家庭”の限界《貧困、介護、DV、LGBTQ+…家族のあり方はさまざま》

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『社会の変え方 日本の政治をあきらめていたすべての人へ』#2

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明石市の歴史的一歩 LGBTQ+当事者2名を採用

 2015年に東京都の渋谷区や世田谷区が同性パートーシップを制度化して以降、徐々にではありますが、国内各地の自治体による取り組みも広がりつつあります。

 私も早くからこのテーマについて意識していましたが、やるからにはこの施策も「やってるフリ」ではなく、当事者や当事者に近い人たちのニーズに沿った実効性のある制度にしようと考えてきました。

野球チームで胴上げされる泉市長。自身は勉強や運動が得意だったが、4つ下に障害を持って生まれた弟が努力をしても歩くことにも困難が伴った。社会の構造により「ありのまま生きる」ことが難しい人がいることを幼少期に実感し、「誰一人取り残さない政治」を目指すようになったという

 2019年秋になり、ようやく明石でも動きが現れました。地元の複数の団体が共同で、明石プライドパレードを初めて開催したのです。レインボーフラッグを掲げ、明石公園を出発して、明石港、商店街を行進。2時間かけて街中を回り、マイクで「私たちをもっと知ってください」と訴え、道行く人々に手を振りました。

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 パレードに出会った道行く市民も微笑ましく見ながら、手を振り返しています。

 その様子を離れて見ていた私は「ようやく明石でも実施できるタイミングが来た」と思いました。そのパレードが、明石市において「歴史的な1歩」となったのです。「課題を整理し、来年度中には新たな制度の創設につなげたい」とのメッセージを主催者に送りました。

 そして翌年、全国公募でLGBTQ+当事者2名を採用。当事者の視点で困りごとを解決していく取り組みをスタートしました。

 

 最初から、市で公的に関係性を「証明」するだけでなく、実際の課題解決につながる「効果」も重視した検討を進めました。

 従来の堅苦しいルールでは、パートナーが病院に緊急搬送されても「法律上の親族ではないから」と、病状を説明してもらえない。ICU(集中治療室)で予断を許さない状況なのに、手を握ることすらできない。住居を借りようにも、家族として認められずに契約できない。日常にさまざまな問題がありました。

 さらに、当事者職員と協議する中で、パートナーだけでなく「子ども」も含めて関係を証明してはと提案がありました。

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